真梨幸子mariyukiko’s blog

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一円ライター(嫌な呼び方ですけれど)

クラウドソーシングという言葉があったかかなかったかの時代。

私が会社を辞めてフリーライターとなった頃。

あまりに仕事がなくて、

ネットで「ライター」の募集を見つけて、登録したことがあります。

結局、不器用な私はそこから仕事を請ける事はありませんでしたが。

でも、

一文字換算で、数円の仕事ならしたことがあります。

「この資料とこの資料から情報を切り貼りして、まとめて……」という依頼でした。

まさに、今回問題になっている。リライトの内職です。

情報の切り貼りはさすがにやばいと思い、一から自分で取材して仕上げたのですが。で、結局、一文字数円の仕事となったわけです。

 

私は、クライアント側の人間であったこともあり、なんでこんな無茶な仕事を発注するのか、その理由もなんとなく理解できます。

下請け孫請けひ孫請けと幾つも会社が絡むことにより、当初の予算がどんどん減っていき、実際に働く現場に届くまでに予算が雀の涙となるからです。この辺はアニメ現場の悲劇とも似ているかもしれません。

 

何が悪いのかは一概に言えないのですが、何がいいのかははっきりしています。

実際に発注する元親と直接仕事をすることです。

そうすれば、それまで一文字1円(四百文字400円)だったものが、四百文字4000円ぐらいには上がる可能性があります。

これは、ライターに限らず、どの商売にも言えます。

ですが、親クライアントと直接仕事をするのが、日本ではかなり難しいのです。

そもそも、親クライアントは、個人には発注しません。何ちゃら編集プロダクションやら何ちゃら仲介業者やらにまず、発注する。

大手広告代理店になると、個人相手には口座取引をしないところまであります。

 

そんな中、親クライアントと直接仕事ができるライター群がいます。

ライターヒエラルキーの上層部に位置し、この方々は、ライティングの腕はもとより、営業力が優れているのです。そういうライターさんたちは、個人といいながら「何ちゃら事務所」など、法人化している場合が多い。

だから、親クライアントと直接仕事ができると言ってもいいかもしれません。

ただ、法人化するといろんな面倒な事務業も発生し、万人がなれるものではありません。

まさに、一握り。

 

 

この一握りの人たちから見たら、1円ライター(内職ライター)の存在は、はなはだ不思議に映るかもしれません。そんな安い金で請け負って、バカじゃないか?と思う人もいるかもしれません

でも、下請けまたは内職でしか、仕事を取れないライターもいる。

または、生活形態や家庭の事情で、自分で営業できないライターも多い。

繰り返しますが、営業力というのは才能そのもので、万人には備わってないのです。

営業力がないライターにとって、クラウドソーシングという形態は、まさに希望だとも思うんです。

 

なので、今回の問題で、クラウドソーシングという形態そのものがなくなるのは、ちょっと違うような気がいたします。

だからと言って、このまま、ライティングの価格が暴落するのを傍観していていいのか?という気もしています。

薄利多売は、歴史的に見ても長続きしません。どこかで破綻します。

 

これは、小説家にも言えることです。

いつだったか。

百円ショップで「100円ミステリー」という文庫本が発売されていたことがありました。

悪寒が止まりませんでした。

これが「普通」の状態になったら、ミステリーはもとより、小説も終わりだな……と思ったからです。

 

何か、まとまりのない文章になってしまいました。

つまり、この件については、私なりの考えがまだうまくまとまっていないのです。

 

ただ、「1円ライター」と呼ばれる人たちを叩くのは、ちょっと違うと思うのです。