自宅とは別に、仕事をするための部屋を借りています。
通勤スタイルにしてオン/オフを切り替えたいと思いまして。
さて、その仕事部屋、上げ膳据え膳のサービスつきでして。
先日も「朱肉がない」ことに気が付き、ダメもとで「朱肉、お借りできますか?」とインターホンでお願いしてみたら、その数分後、ポーターさんが届けてくれました。
とにかく住み心地満天の仕事部屋で、景色も抜群で、なにより立地が素晴らしい。飲食店はたくさんあるし、駅とも直結しているし、便利この上ない! 俗っぽくいえば、官能的な部屋なのです。
いっそのことマリモさんも連れてきて住んでしまいたいぐらいですが、私は自宅がある。帰らなければなりません。
自宅も自宅で、いい場所なんです。
確かに、立地的にはそれほど便利ではありません。駅からも離れています。が、その分静か。治安抜群。なにより質実剛健な部屋なのです。なので、一度自宅に戻るとその安心感で、「ああ、やっぱりここがいいよね」ってなります。
でも、心のどこかでは、いちいち、仕事部屋と自宅を比べている私がいます。
あれ? この感じ。なにかに似ている…。
そうだ。正妻と愛人の間で揺れる男の心境ではないか!
なるほど、愛人を持つ妻帯者の男というのは、なにも浮気をしているわけではなく、本気で両方を愛しているんだと。
そして、常にその間で揺れ動き、苦悩しているのだと。
さて、このたび、引っ越しをすることになりました。
仕事部屋のほうです。
やはり、所有している自宅のほうはそうそう引っ越すわけにはいかない。
これも、「婚姻」という法律で守られている正妻の立場に似ています。
いざというとき、手放さなければならないのは、やっぱり「愛人」なのです。
でも、後ろ髪ひかれること、ひかれること。
あんな至れり尽くせりのサービスつきの物件、そうそうありません。
私はこれからも、自宅(正妻)でくつろぎながら、仕事部屋(愛人)との思い出に浸るのでしょう。
といいながら、新しい愛人(仕事部屋)のスペックを確認しながら、ああしようこうしようなどと、妄想に耽っている私です。