真梨幸子mariyukiko’s blog

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恋せぬふたり

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積極的に、LGBTを取り上げてきたNHK

でも、ちょっと不満があったんですよね。

LGBT作品には、必ず恋愛がつきまとう。

「やっぱり、恋愛をからめないといけないのね」と。

多様な性的志向を扱っていながら、ひとつ、忘れてない?と。

そう、「アロマンティック・アセクシュアル」。

アロマンティック」とは他者に恋愛感情を抱かないこと。

アセクシュアル」とは他者に性的なものを感じないこと。

これらを無視しして、「多様な性的指向」は語れません。

なぜなら。

想像以上に、「アロマンティック・アセクシュアル」な人たちは多いからです。

そんなことを思っていたら、「恋せぬふたり」というドラマがはじまりました。

他者に対して恋愛感情も性的興奮も感じない男女の物語です。

たぶん、日本のテレビドラマでは、初の試みではないでしょうか?

 

さて、

想像以上に、「アロマンティック・アセクシュアル」な人たちは多い……と先ほど書きましたが、かくいう私もその一人の疑いがあります。

もちろん、私も若い頃(発情期)は、それなりに恋愛もしました。

片思いに身を焦がしたこともありました。

でも。

あるとき、気がついたんです。

「私、片思いしているときが一番燃える」

両思いになって付き合うと、なんか違うんですよね。会っていても「早く一人になりたい」とか思ってしまう。一人になって、会えない苦しみに身悶えたい……と。

なんじゃそりゃ、ですよね。

そうなんです。私は、「妄想」しているときが一番幸せで、実際に会っていると白けてしまう……という、妄想恋愛体質な女だったのです。

 

でも、その妄想恋愛も加齢とともに薄れ。気がつけば、殺人とかドロドロとか、そんな妄想ばかりするようになっていました。

 

で、気がつけば、半世紀以上が経ってしまいました。

還暦を数年後に迎えた今では、「恋愛」を妄想する気にもなれない。

 

思えば。

世の中は、恋愛マウントにあふれています。

どれだけ恋愛をしたか。どれだけセックスをしたか。どれだけ早く初体験を済ませたか。

私はいつだって、カーストの底辺をうろついていたわけですが、特に悔しいとも思わず。

むしろ、カーストトップの恋愛体質の人たちを憐れんでました。

だって、彼女たちはめちゃくちゃエネルギー(時にはお金)を浪費している。

人生を踏み外した人も多数。そんな人たちを観察しては、ネタの引き出しにどんどんつめこんでいきました。

 

私の場合は、それが職業につながったのでラッキーでしたが(または、結婚をせかす親でなかったこともラッキー)、世の中の「アロマンティック・アセクシュアル」たちは、とてつもなく肩身の狭い思いをしていると想像します。

なんだかんだいって、やっぱり世の中は、恋愛上手な人が主導権を握っています。

恋愛のサークルからはずれた人たちは、「あの人、なんでいい歳して一人なのかしらね……。気持ち悪いわ」なんて陰口を叩かれます。

で、たぶん、そういう人たちは、想像以上に多いと思われます。

その証拠のひとつが、去年、放送された「阿佐ヶ谷姉妹の のほほんふたり暮らし」の大ヒット。私も大好きで、もちろん原作のエッセイも愛読しています。

「のほほんふたり暮らし」には、1ミリも恋愛要素はでてきません。

(ドラマでは、お隣の大学生の恋愛模様とか、中華屋さんの夫婦愛はちらりと描かれていますが)

なのに、「ああ、こういう暮らし、憧れるな……」と思った人は多いと思われます。

憧れるといえば。

やまと尼寺 精進日記」の暮らしは、御伽噺のようで。

このコンテンツもまた、何度も何度も再放送されるほどの人気です。

こういう暮らしをしたい……という人が多い証拠です。

 

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イヤミス作家としては、「女所帯だもの、なんだかんだで、ドロドロしちゃうんじゃないの?」と考えがちですが、でも、女がドロドロする原因は、たいがい「恋愛」「異性」なんですよね。

それらがすべて取り除かれた環境では、案外、女所帯は穏やかで長続きします。

私は女子校でしたが、割とサバサバ系が多かったせいか、めちゃ居心地よかったんですよね……。

 

ということで、なにかとりとめのない話になりましたが、要するに、人生「恋愛」だけじゃないということです。

特に人生百歳時代になった今、恋愛だけで人生語れない。

エンタメも、そろそろ「脱恋愛」を試みてはいかがでしょうか?