真梨幸子mariyukiko’s blog

【公式】真梨幸子(&マリモさん)の最新情報

残穢 -住んではいけない部屋-

残穢 -住んではいけない部屋-

を、Amazon primeVideoで視聴。

 

 

事故物件かどうか。

今は告知は義務ですし、「大島てる」もありますので、事前に知ることができます。

とはいえロンダリングされている場合もあるので、運悪く、それとは知らず事故物件を掴まされることも。

「でも、新築なら安全よね?」

いえいえ。

建物(ハード)は新品でも、その土地が持つ「念」(ソフト)のことを忘れてはなりません。

 

「私的怪談」でも少し触れましたが。

以前住んでいたX市のマンションの話です。

そこは新築の分譲マンション。

 

今から約20年前。

お盆休みの最終日。

暇をもてあそび、冷やかしでモデルルームを見て回っていたところ、

気がつけば、購入の申し込みをし、さらには手付けの十万円を払っていました。

そう。その日の朝までそんなつもりはまったくなかったのに、

その日の夕方には、マンションを購入していたという、

なんとも恐ろしい衝動買い。

 

ミイラ取りがミイラに。

あるいは、飛んで火に入る夏の虫。

 

でも、そのマンションの立地は最高でした。

駅近で、商業施設も徒歩圏にそこそこある。

部屋も最上階で、しかも三方に窓があり景色も日当たりも抜群。

間取りも気に入りました。

なにより、家を所有するという満足感と優越感で、私は身も心も満たされました。

住宅ローンの不安はありましたが、そんなのは満足感と優越感が吹っ飛ばしてくれました。

 

そんな私のキラキラとした心に影が差したのは、

半年を待って、ようやく入居したときのことです。

エアコンの取り付け業者のおじさんがやってきました。

部屋に上がるなり、

「いい部屋ですねー、すごく眺めがいい」

と、お褒めの言葉。

「えー、そんなことないですよ」

などと、謙虚に否定しながらも、その唇はニヤニヤと綻ぶ。

「そうでしょう? すごいでしょう? 私が買ったんですよ! この私が所有者なんですよ!」

と、今にも言葉が飛び出しそうになります。

と、そのとき。

「あれ? この部屋……」

おじさんの顔が、突然強張ります。

「ここって、まさか……」

ぶつぶつ言いながら、窓の風景を見渡すおじさん。

「……なんですか?」

気になって訊くと、

「いいえ、なんでもありません」

と、おじさんは急に、口を固く閉じてしまいました。

当初の馴れなれしい様子はどこへやら、突然、無口に。

そして、手早く工事を終えると、

逃げるように部屋を出て行きました。

 

気になりました。

 

が、新築のマンションライフに酔う私は、おじさんのことは数時間後には忘れていました。

 

でも。

暮らしているうちに、

違和感が、じわじわと忍び込んできたのです。

まずは、夜な夜な聞こえる、赤ちゃんの泣き声。

寝室のベッドで寝ていると、微かに聞こえるんです。

火がついたように泣き叫ぶ赤ちゃんの泣き声が。

隣の部屋の赤ちゃんかな?と思ったんですが、

その部屋は独立していて、隣とは接していません。だから、お隣ではない。

じゃ、下の住人? 

それとも、換気扇を通して、まったく関係ない部屋から声が流れてくる?

ときには、

ぼそぼそとした話し声も聞こえてきて、

(女性と男性がなにか会話しているような)

あげくには、上から誰かが歩くような足音まで。

最上階なのに!

マンションの騒音問題は、一筋縄ではいきません。

いろんな音が増幅されて、想像してもないようなところから聞こえてくる。

上から聞こえたはずなのに、実際は階下の、全然関係ない部屋から……とか。

いずれにしても、

集合住宅に住んでいる以上、

騒音問題は避けては通れない。

だから、私も気にしないことにしたんです。

 

ところが、ある日、

明らかに部屋の中から聞こえてきたんです。

かりかりかりかりかりかり」という音が。

その音には数ヶ月悩まされましたが、

あるとき、整理ダンスの引き出しを開けたら大きな髪切虫が飛び出してきて

こいつが「かりかりかりかりかり」の原因でした。

この体験は、せっかくなので

孤虫症 (講談社文庫)」のモチーフにしました。

さらには、

馬鹿でかい「ナナフシ」、「ヤモリ」まで目撃。

「なんで? 新築のしかも最上階なのに! 普段、地上でも見ることがないヤモリとナナフシがいるのよ、この部屋には!」

怒りと恐怖で我を忘れそうになりましたが、

それでも、新築マンションライフを堪能していた私。

 

そんなこんなで、

2年が過ぎた頃。2000年頃でしょうか。

ネットでは匿名掲示板が大流行り。

私もこそこそ覗いていたものですが、あるとき、

その掲示板で、「あれ?」と思う書き込みを見つけました。

話題にしているのは、どうやらX市の怖い話。

しかも、うちの近所の話じゃないか?

いや、もっといえば、うちのマンションのことじゃないか?

そう、まさに、うちのマンションのことを話題にしていたのです。

『あのマンションの住民、知らず住んでんだろうか』

『そりゃそうでしょう。知ってたら、住まないでしょう』

的なやりとり。

心臓ばくばく。鳥肌ぶつぶつ。

「なに? なんなの? なにを知らないっていうの?」

 

つまり、こういうことでした。

全国的にも有名なある事件。

その舞台になったのが、まさに、うちのマンションがあった場所。

事件現場になった建物を取り壊して、建てられたのが、今のマンション。

「ひぃぃぃぃ」

変な声が出ました。

その事件のことはよく覚えています。

だって、連日報道していましたから。

「いやな事件ね。被害者たちがかわいそう」と母とも話していました。

その事件現場が、まさか、ここ?!

 

しかもです。

そのマンションだけでなく、

徒歩圏に「幽霊マンション」と言われる物件が複数。

どうやら、土地そのものにいわくがありそうなんです。

昔、その近くを流れる川は真っ赤に染まっていた……なんて都市伝説まで。

その川の近くでは、不思議な殺人事件まで起こっています。

 

だからといって。

ローンを抱えたまま、引っ越すわけにもいかず。

結局そこには15年以上住みました。

いろんなことがあった部屋でしたが、

でも、あの部屋に住んでいたからこそ、

「孤虫症」でデビューすることができ、

そして、「殺人鬼フジコの衝動 (徳間文庫)」が生まれ、そしてプチブレイクすることができました。

 

ある人が言っていましたが。

事故物件は、水商売家業と相性がいいそうで。

役者さんや飲食関係の人は、わざわざ事故物件に住むんだそうです。

運気を上げるために。

小説家も、いってみれば水商売。

あの部屋のおかげで、今があるのかもしれません。

 

つまり、

「相性」なんだと思います。

いわくつきでも、その「いわく」と相性がよければ、

むしろ運気が上がる。

なんの「いわく」がなくとも、相性が悪ければ

不幸続き。

 

そんなことを思いながら、

残穢 -住んではいけない部屋-」を楽しみました。

 

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