第一回が放送されてから、ずっとファンだった「ネコメンタリー 猫も杓子も。」に、まさか、自分が出演することになるなんて。。。
いまだ信じられない心境です。
なにしろ、ほぼ猫初心者。それまで猫が殊更好きだったわけでもなく、むしろ苦手で、どちらかというと、犬派でした。
ずっと、ペットが欲しかった。
でも、ペット不可の部屋に住んでいたし、おひとり様なので、私には高嶺の花よね……と半ば諦めていたとき。
念願の「ペット可」の部屋に住むことが叶いました。
それが、遡ること、5年前。
「飼うんだったら、もう今しかない」と、真剣にワンちゃん探しをはじめたのでした。
歳も歳だし、ワンちゃんを看取るまでお世話するには、今がタイムリミットだと思ったのです。
担当さんに付き合ってもらってショップをめぐったり、保護犬の情報が載っているサイトを覗いてみたり。
そんなこんなしているうちに、1年が過ぎようとしていました。
そう、2016年の2月のことです。
某デパートで買い物をしていたとき、ふと思い立って、ペットコーナーへと立ち寄りました。
アクリル板の壁で囲まれたプレイルームにいたのは、数匹の子猫。
「にゃーにゃー」と、いかにも、可愛らしい様子で戯れています。
「きゃーかわいい!」とギャラリーからも黄色い歓声が。
と、隅の暗がりのほう見ると。一匹の灰色の子猫が
「くるなー、こっちにくるなー」と、怯えるように他の猫を威嚇しておりました。その尻尾はみごと膨らんで、垂れ下がって。
私の隣にいた、ギャラリーの一人が言いました。
「あの灰色の子はダメね。まったく社会性がない。性格も難しそう。たぶん、誰にも引き取ってもらえない」と。
なんだか、カチンときたんです、私。
私のことを言われたわけじゃないのに。
で、その灰色の子猫を注目していると、まあ、確かに社会性はゼロ。
他の子猫が「遊ぼー」とちょっかい出してきても
「くるなー、くるなー」と、爪を立てて抵抗しています。
そんな様子を見ていて、唐突に思ったんです。
「あの子だ。あの子と暮らそう」
と。
それが、マリモさんとの出会いです。
犬を飼うはずが、気がつけば、隣にいるのは灰色の猫。
まあ、人生とはそういうもんです。
で、マリモさん、社会性ゼロ、難しい性格のまま二歳になりました。
消防点検のおじさんが部屋に入るだけでも、食欲がなくなるような人見知りさん。
心を許しているのは、私と、定期的に通っている動物病院の先生とトリマーさんだけ。
あるとき、ふと思いました。
「私がいなくなったら、この子、どうなるんだろう? こんなに人見知りが激しくて、気難し屋さんで。誰も引き取ってくれないかも……」
こんなことも思いました。
「なにか大きな災害があって、避難所とかで暮らさなくてはならなくなったとき、マリモさん、そんな環境に我慢できるかしら。知らない人や知らない動物がたくさんいるような環境に」
そして、こんなことを考えはじめました。
「マリモさんのご学友を今のうちに」
が、多頭飼いが難しいことは、いろんな本やサイトを見て理解はしてました。
孤独を好む猫。多頭飼いがストレスになることも。
だからといって、このまま、私とマリモさんの二人だけの閉じた世界を続けてもいいものか……。
そんな葛藤を抱きながら、マリモさんのご学友探しがはじまりました。
多頭飼いをはじめるには、先住猫さんの年齢が重要だと聞きましたので。
年齢がいけばいくほど、難しくなる。
だから、マリモさんが3歳になる前に、見つけよう。見つからなかったら、このままふたりっきりで。
そんな、どこか運試しのような感じで、保護猫サイトをのぞいたり(でも、おひとり様で半世紀以上生きている私には、保護猫を譲り受けることはできないんですけどね)、ショップをのぞいたり。
そして、去年の4月。
マリモさんのトイレの砂が切れてしまい、でもAmazonでは間に合わなくて、仕方なく近所のショップを検索して、買いに行ったときのことです。
はじめてのショップ。
ドアを開けた瞬間、猛烈な視線を感じました。
視線の元を見てみると、マリモさんと同じ灰色の子猫が、じっとこちらを見て、そして、しきりに瞬(まばた)きをしているんです。
どきっとしました。
だって、猫って、なかなか瞬きしてくれない。
マリモさんですら、してくれたことがない。
猫の瞬きは、強い信頼関係の印で、滅多におめにかかれない。
そんな知識があったもんですから、
「この子だ!」と、咄嗟に閃いてしまいました。
そして、トイレの砂を買いに行ったはずが、なぜか、灰色の子猫を持ち帰るという。。。。
それが、モナミちゃんでした。
私の閃きは間違ってはいなかったようです。
初めの数ヶ月は、新参者に警戒しまくっていたマリモさん。
尻尾が狸のように膨らみ、でも、垂れ下がっている。そんな毎日でした。
一方、尻尾をぴーんと立てて、
「おねーちゃま、おねーちゃま」と、
果敢にじゃれつくモナミちゃん。
じゃれつきが喧嘩になることも多いのですが、よくよく観察してみると、どちらとも爪は立っていません。
そうこうしているうちに、「ネコメンタリー」の出演依頼が。
去年の暮れのことです。
正直、悩みました。
それまでのネコメンタリーの猫さんとはまるで違う、
一見、修羅場に見えるマリモさんとモナミちゃんの激しいじゃれあい。
画(え)にならないんじゃ……。
なによりNHK的にNGなんじゃ……。
それ以前に、マリモさんが、撮影クルーを受け付けないんじゃ……。
でも、ダメもとで引き受けることに。
案の定、撮影2日目まで、マリモさんはどこかに隠れて、一向に出てこない。
その穴を埋めようというのか、大はしゃぎなモナミちゃん。目にもとまらない速さで縦横無尽に飛び回ります(そのせいで、膀胱炎になるという。。。)
モナミちゃんの動きが激しくて、
「お、追えない……」と嘆くカメラマンさん。
ああ、これじゃ、撮影にならないな……と暗い気持ちに沈み込んでいた撮影3日目、
ようやくマリモさんが顔を出してくれました。
そして、人(猫)が変わったように、カメラの前でポーズ。
モナミちゃんが来る前だったら、まったく考えられなかったこと。
ああ……。
喧嘩ばかりだけど、それなりに社会性を学んでいてくれたのだな…と、親バカな私はひっそりと涙。
これで、いつ死んでも、この子たちは大丈夫。
いやいや、死にませんよ。
あの子たちより先には!
頑張ります。