真梨幸子mariyukiko’s blog

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ユニバース25

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人口の二極化が進んでするとのことです。

欧米や日本など先進国の人口は減っているのに(出生率が低下しているのに)、インドやエジプトなどの国では人口が爆増している。

このニュースを聞いて、都市伝説マニアにはお馴染みの、「ユニバース25」を思い出しました。

ユニバース25」とは、カルフーンという学者が行った「楽園実験」です。25回行ってもいずれも同じ結果になったということで、「ユニバース25」と呼ばれています。

ja.wikipedia.org

 

 

ちなみに、去年まで連載していた「ノストラダムス・エイジ」の中でも触れていますので、ちょっと抜粋してみます。

 

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 今は昔。

 八匹の、オスメス対の四組のネズミが、楽園に放たれた。

 その楽園には敵はいない。働く必要もない。食糧も水も、豊富にある。病気も予防されている。

 約三百日後、八匹だったネズミは六百匹以上に増えた。

 楽園のキャパシティーは三千匹。まだまだ余裕はある。富を公平に分け合えば、みな幸せに暮らすことができる。

 ところが、しだいにネズミたちは争うようになる。その結果、テリトリーに変化が出てきた。

 狭いスペースにぎゅうぎゅうに暮らすネズミと、広いスペースでゆったりと暮らすネズミ。

 言うまでもなく、前者は負け組で、後者は勝ち組。

 勝ち組は暗黙のルール(秩序)のもと悠々と子育てに励むが、負け組はいつでも小競り合い。性別や年齢に関係なく強引に交尾(レイプ)しようとするオスも現れる。負け組のメスたちは子育ても上手にできない。産んでも産んでも、子ネズミは死んでしまう。子育てせず、子ネズミを無視(放置)するメスが多く出現するからだ。

 負け組のネズミたちの一部は争いを避けて、引きこもりになってしまう。引きこもりのネズミは他のネズミとの交流も交尾も一切拒否し、孤独なまま一生を終える。

 六百日目。出生率の低下がはじまり、死亡率がそれを上回るようになる。

 新しい世代のネズミたちは、子育てやテリトリー抗争には関心を示さず、食事や身だしなみにばかり時間を費やす。さらにあとの世代のネズミたちは略奪など反社会的な行動を繰り返すようになる。

 そして、千七百八十日目。最大二千二百匹まで増えたネズミは、いよいよゼロになった――。

(中略)

 

「そう。一九六〇年代にアメリカの動物学者が行った実験でね、俗に〝ユニバース25〟って呼ばれている」

「ユニバースって……世界ってことですか?」

「正解。でも、世界っていうより、楽園(ルビ・傍点)だね」

「楽園……」

「そう。理想郷とも天国とも極楽ともいえる。この実験は、楽園の中で生物はどうなるかを観察したものなんだ」

「楽園なら、みんな幸せになりますよね?」

「そう思うだろう? でも、さっき話したように、途中から格差社会が出現し、負け組のネズミたちの秩序と本能は完全崩壊し、異常行動がはじまる。そしてついには生殖と子育てという、生物にとって一番重要な行為まで放棄してしまって、楽園の中のネズミは滅亡してしまうんだ」

「…………」

「生物は、楽園という環境に置かれると、自ら滅亡してしまうという恐ろしい結果が提示されたんだよ」

「でも、たまたまなんでは? たまたま、その実験がそういう結果になっただけで――」

「いや、違う。たまたまではない。二十五回も同じ実験をして、すべて同じ結果になった」

「二十五回? あ、だから、〝ユニバース25〟なんですか?」

「そう、あたり。紗那ちゃんはやっぱり優秀だな」

「そうか。……二十五回も同じ実験をして、すべて同じ結果になったんなら、それは、もう、そういうことなんでしょうね」

「そう、そういうこと。生物は、楽園でも地獄でも、結局は滅亡する運命ってことなんだよ」

「生物って、人類も当てはまりますか?」

「もちろん。今この地球で、〝ユニバース25〟をそのまま再現しているのは、まさに人類だ。凄まじい格差社会、負け組の秩序崩壊、引きこもり、出生率の低下――」

「でも、世界的に見れば、人口は増加中ですよね?」

「そうだね。でも、それも近い将来、減少に転じるよ。先進国がそのいいサンプルだ」

「どういうことです?」

「先進国ほど、出生率が低下して死亡率がそれを上回っている。福祉が充実している国ほどそうなんだ。つまり、楽園度が高い国ほど、滅亡へのカウントダウンがはじまっているんだよ。

(中略)

「楽園のトラップだ。楽園という環境に慣れすぎると、人も生物も、自分の欲望と快楽を優先してしまうものなんだ。食糧も水も独占したい。自分だけが快適ならそれでいい。自分だけが幸せならそれでいい。わざわざ子供を作って、面倒な子育てなんかしようとは思わなくなるんだよ」

「そういうものでしょうか……」

「先進国の人ほど、『自分の人生を生きる』とか『自分らしく生きたい』とか『輝く人生』とか言うだろう? 一見、言葉は綺麗だけど、それって結局、究極の自己中ってことだ。自分さえよければ、他者のことはどうでもいい。もっといえば、人類が滅ぼうと知ったこっちゃない……ってことだ。楽園に暮らしていると、どうしてもそういう考え方になってくる」

「そういうものでしょうか……」

「残酷な話だけど、〝ユニバース25〟という実験がそれを証明しているし、なにより、今のこの日本がまさにそれを証明しているじゃない。日本だけじゃない、先進国すべてがそれを証明している」

「…………」

「本当に残酷で矛盾した話だけど、全世界が、先進国並みの豊かさと平和を手に入れたときこそが、人類滅亡のカウントダウンのはじまりだ」

「世界平和が、滅亡のはじまりってことですか?」

「そういうことだね」

 

(「ノストラダムス・エイジ」(真梨幸子)より)

 

【参考】

mariyukiko.hatenablog.com