鎌倉殿の13人。
暗黒面に落ちた、義時。ますます黒光しています。
今回は、妹(実衣)の首まではねようと。
そして、一言。
「鎌倉は誰にも渡さん」
まさに、権力の権化。
ここまで、主人公が真っ黒で残酷な大河ドラマがあったでしょうか。
同じく鎌倉草創期を描いた「草燃える」の義時も後半、相当な悪に染まってしまいましたが、でも、主人公ではない。あくまで脇役で、政子の代わりに悪の面を引き受けるという流れでした。
でも、「鎌倉殿の13人」は、義時が主人公。
今までの大河ですと、主人公がどんなに残酷で非道な行いをしても、どこか綺麗事として描かれることが多かった。天下統一とか世の安寧を言い訳にして。
が、義時はもう言い訳すらしない。「頼朝様が開いた鎌倉のため」という言葉もいよいよ消え、とうとう「鎌倉は誰にも渡さん」とまで言い出した。
あの、真面目で優しくて恋愛下手で朴訥とした青年がね……。
まさに、「ゴッドファーザー」だよなぁ。
ゴッドファーザーも、父親のヤクザ家業に嫌気がさしている心優しい青年が、なんだかんだ真っ黒なヤクザ家業に染まっていく話で、最後は、実の兄すら手にかける。
そこには正義も愛もなく、最後、アルパチーノの洞窟のような瞳が印象的でした。
三谷幸喜さんは、鎌倉殿の13人で、日本における「ゴッドファーザー」を描きたかったんだろうなぁと。
さて、今回、見どころは実衣の悪女ぶり。
彼女も、義時に負けず劣らず、権力に魅入られてしまった。
自分の息子を鎌倉殿にするために、実の兄(義時)を陥れようとする。
「小四郎(義時)を殺していいんですか?」と三浦殿に問われたとき、
「小四郎? 誰、それ?」と、不敵な笑み。
そんなんだから、小四郎(義時)に首をはねられそうになるんだって。
凄まじい兄妹喧嘩です。
実衣演じる宮澤エマの演技がとにかく素晴らしい。
朝ドラの「おちょやん」で、ヒロインの義母を演じたとき、「すげー」と驚いた記憶があります。
その凄みある演技。ヒロインを家から追い出す意地悪な義母と、後にヒロインを助ける老いた義母。どちらも素晴らしかった。正直、ここまで演技力があるとは思わなかったので、拍手喝采しました。
その宮澤エマさんが演じる実衣ですから期待はしていたのですが、期待以上の怪演です。
そして、やっぱり、義時の黒光りの凄まじさ。
これ、もはや悪役(ヒール)なんですけど。
でも、その対局として政子の存在があります。
政子は今回、自ら尼将軍となりました。
弟を制御し、そして弟と対峙するために。
光と闇の対立構図の出来上がりです。
先週の「姉上は、鎌倉の闇を排除するためになにをされましたか?」という弟の問いに、自ら将軍になることで答えを示しました。
さてさて、鎌倉の闇(義時)は、ラスト、どんな形で排除されてしまうのでしょうか?
「鎌倉殿の13人」も残すところ2回。
来週はいよいよ、あの「演説」の回。
オープニングでも登場する尼将軍の演説、もう今から楽しみすぎて!